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執筆者の写真コスタリカ社会科学研究所

「牛なしカレータ」のお話(『コスタリカ 伝説集』より)

更新日:2023年1月30日


『コスタリカ伝説集』(エリアス・セレドン編、山中和樹訳  国書刊行会刊, 2022)から、今回は「牛なしカレータ」についてのおはなしを紹介します。


 カレータは二頭の牛が曳く荷車。コーヒー豆や農作物を運ぶのには欠かせないもので、現在でも使われている地域があるそうです。牛車自体はスペインから持ち込まれたもののようですが、コスタリカのカレータは荷台や車輪に鮮やかな模様が描かれているのが特徴。絵付け専門の職人さんもいるそうです!


 さて、前回の「セグア」と同様、第三部の「怪異譚」に「牛なしカレータ」についての三つの話が掲載されています。「悪魔のペドロ」のカレータの話、盗んだ聖なる木材で作られたカレータの話、そのカレータに果敢に挑んだ二人の男が味わった恐怖の話。

どの話にも共通しているのは、タイトルの通り、カレータが「牛なし」で動いているということ…!


「この恐ろしい化け物は日が暮れると、町の通りに出没する。月が出ていようがいまいがそして人通りが多かろうが少なかろうが、ものすごいスピードで車輪をガタガタ轟かせていく。その響きはまるで地獄から聞こえてくるようだ。行先など知ったことではない。行く手を遮るものがあれば、だれかれ構わず、轢いていく。カレータを曳く牛の姿も、カレータを操る牛飼いの姿もない。だが、カレータには悪魔自らが乗っていて、見事な手綱さばきを見せているのだ。その手綱さばきはどんな名人の御者も及ぶところではない。(「牛なしカレータ(3)」冒頭 p.262)


 生活に欠かせない道具であるカレータが、凄まじい音を立ててひとりでに走り回る恐怖…‼︎身近なものであるからこそ、その恐ろしさがより一層感じられるのかもしれません。また、身近なものだからこそ、こんな風にたくさんのおはなしが語られるのでしょう。


 2008年に、カレータと、それを曳く牛、そして牛車使い(牛飼い)の三つを合わせて、ユネスコの世界無形文化遺産に登録されています。


 研究所には、小さなカレータと、カレータ模様のマスクを所蔵しています。

おいでの際には是非ご覧になってくださいね。


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