4月8日、小雨降る中、今度は西に向かいます。
やってきたのは大分県日田市。
なにゆえに外国人観光客が、わざわざ日田を選んで来るのか……
それはひとえに、これゆえです。
これで、このシリーズのタイトルの理由がおわかりいただけたでしょう。
そう、「進撃の巨人」の聖地なのです。
日田市では、「進撃の巨人」を町おこしにフル活用しているようでした。
まずはこの大山ダム。
「進撃」の作者はこのダムから作品の着想を受けたとか。
エレン、ミカサ、アルミンの3人が、「壁」に正対しています。
確かに、こうやって佇むと、ウォール・マリアに見えるような……。
実はこの場所、google mapなどを使うと、うまく辿り着けません。ダムの上にある事務所に導かれてしまうのです。その辺りまで来て車を降り、迷いながら歩いていると、お目当てのこの像を上から発見。下に降りようと車に戻っていると、同じようにダムの上に導かれてしまった外国人観光客と思しきカップルを発見。声をかけてみると、やはり私たちと同じく迷った様子。すでに目的地を発見した私たちに彼らも同行する形で堤の下に降り、「憧れの聖地」へと到着したのでした。
彼らはイタリアからの観光客でしたが、やはり日田に、というより九州に足を伸ばした目的はこれ。他にもアジア系と思しき観光客の団体が来ていました。地元九州民ながら、「こういう場所があるから行きたい」と言われるまで、日田がすごいことになっているとはまったく知りませんでした……。
普段私はコスタリカで日本人をガイドしていますが、コスタリカ人を日本でガイドするのははじめて。これもいい勉強だと考え、事前にいろいろ調べてみました。すると、なんと“進撃の巨人”関連のミュージアムが2つもあることがわかりました。そこでどちらも行くことに。
まずはひとつめ、道の駅・水辺の郷おおやまに併設されている進撃の巨人 in HITA ミュージアム。
すごい圧です。
好きな人にはたまらないでしょう。
あえてネタバレはさせずにおきますが、館内は撮影自由です。
グッズも豊富。
いい時間になったので、この道の駅に隣接する日田焼きそばチェーンの想夫恋大山店へ。
ここは「進撃の巨人」原作者・諫山創さんがバイトしていたところらしく、色紙が掲げられていました。
要するに、ここも「聖地」のひとつ。コスタリカからはるばる来た甲斐もあるというものです。
お腹もいっぱいになったところで、ふたつめのミュージアム「進撃の巨人 in HITAミュージアム ANNEX」を訪れます。
この暑苦しさ(?)がまさに進撃ワールド。
たっぷり時間を使って、全館余さず観回しました。
出口のほうがより暑苦しさ全開でした。
さすがにこれでマニアもお腹いっぱいでしょう。
というわけで、帰路に向かいます。途中、日田駅南口に立ち寄りました。
もちろん目的はこれ……
…のわけはなく、これ…
…でもななくて、もちろんリヴァイ兵長です。
日本人が知らなくとも、世界中から日田に観光客が集まるのがよくわかりました。
福岡に戻りがてら、太宰府天満宮も訪れました。ちょうど本殿では神事が行われており、終わるまでずっと眺めていました。
一旦帰宅して休憩後、旅の締めとして、また最初に体験した回転寿司との違いを知ってもらうため、弊所司書セグアも伴って博多太兵衛寿司で本格的なお寿司をいただきました。
もちろんお値段もそれなりに本格的なのですが、それでも彼らからしたら「コスタリカでちょっといいディナーをした時の値段」くらいです。しかもそれでいて、母国では味わえない生き造りや踊り食いなど、日本ならではの食文化も体験(大将、気を遣っていただいてありがとうございます!)。味はもちろんのこと、旅の体験としても大満足のディナーとなりました。
ーーー
彼らを案内しながら、あらためて感じたことがあります。
ひとつは、国としてのコスタリカの著しい経済成長と、日本の著しい経済衰退です。
すでに何年か前から、ものによってはコスタリカの方が物価が高くなってはいましたが、今や完全に逆転した感があります。コスタリカの外食の値段は、どんなに頑張っても日本の牛丼屋の値段のように安上がりにはいきません。
それだけでなく、20代の若者たちが旅行先として日本を選び、3週間も滞在すること、アニメの「聖地巡礼」にお金を躊躇なく使えることに驚きます。ちなみに彼らは九州に来る前に、淡路島にあるNARUTOのテーマパークを訪れたのだそうです。
逆に今日本からコスタリカに行こうとすると、下手をするとコロナ禍前の倍くらいコストがかかるようになりました。もうおいそれと行ける国ではなくなってしまったようです。
コスタリカもすでにOECD加盟国。いつまでも日本が上だと思い上がれる根拠は、もうどこにもありません。「コスタリカに旅行に行く日本人」より、「日本に旅行に来るコスタリカ人」のほうが、すんなり心に思い描けるほどです。もちろん、日本人にももっとコスタリカに来ていただきたいですが。(9月に弊所企画のコスタリカツアーを予定しています。別途お知らせいたしますので、ぜひ行きましょう!)
もうひとつは、平和に対する一般的感覚のレベルの差です。彼らの日本訪問の主目的は、アニメの“聖地巡礼”です。平和運動に熱心な活動家などではありません。ですが、コスタリカ人として日本に来たならばヒロシマ・ナガサキを訪れ、原爆資料館に行き、ガイドの話に耳を傾け、質問を投げかけて理解を深める。それは、人類として当然のことと言わんばかりに、彼らにとっては自然なことでした。
彼らは、特段「平和に関心がある」という人たちではありません。コスタリカではこのくらいが標準的意識なのだと考えたほうがよいでしょう。この差が、日本とコスタリカの差なのです。
プライベートな観点からは「コスタリカの家族の受け入れ」でしたが、コスタリカ研究における新たな気づきもたくさん得られた「進撃のコスタリカ人」の旅でした。
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