「ネルソンさん、あなたは人を殺しましたか?」

”ベトナム帰還兵が語る「ほんとうの戦争」”について、見て、読んで、考えたこと

資料室司書のCeguaです。

塚本晋也監督の話題の映画、「ネルソンさん、あなたは人を殺しましたか?」、ご覧になりましたか?

https://nelsonsan.jp

わたしはコワイなあ、正直観るの嫌だなあ、と思いながら、でも、数少ない上映館が近くにあるのだから、見なくては!と行ってきました。

 前半の戦場での場面は怖くて、凄惨で、足の震えが止まりませんでした。正直来てしまった事を後悔し、途中で出ようかと思ったほどです。でも、もっと怖くてひどいことが、戦場ではあったはず。あれでもかなり「抑制された表現」なのだと考えると、本当に、怖い…。

 戦場だけでなく、訓練で滞在した沖縄での、沖縄の一般市民に対する暴力にも、震撼しました。あんなことが日常茶飯事だった沖縄…今も根本的には解決していないことを考えると、言葉を失います。

 でも、もっと怖いのはその後、帰還してから。帰還兵のトラウマ、PTSDについて(当時はそんな概念はなかったということも含めて)、どれほどの苦しみだったか。苦しみながらも、沖縄にも、ベトナムにも、自分の経験を話しに行くネルソンさん。本当にすごいなあと思います。

 さて、この映画にはネルソンさん本人による同タイトルの原作(講談社文庫版, 2017年刊. 単行本は2003年刊)があり、弊所資料室には『戦場で心が壊れて:元海兵隊員の証言』(新日本出版社, 2006年刊)と共に並んでいます。今回、やっと通読してみました。

https://librize.com/costarica/search?q=%E3%83%8D%E3%83%AB%E3%82%BD%E3%83%B3

 

 映画は原作にほぼ忠実に作られていることがわかりました(ほぼ一瞬の映像表現が、元は結構長い文章だったことに気づき、舌を巻きました)。『戦場で心が壊れて』の方は、前作を補う箇所、ご自身の講演活動、さらには日本について「国全体がPTSDにかかっている」という衝撃的な指摘などがあります。ダニエルズ先生によるカウンセリングの詳細は、後者の記述に拠っているようです。双方大き目のフォントで、ページ数もそれほどでもなく読みやすいのですが、読後感はずっしりです。

 小学四年生の女の子の「ネルソンさん、あなたは人を殺しましたか?」という問いと、ダニエルズ先生から毎回執拗に繰り返される「あなたはなぜ人々を殺したのですか」という問い。そして戦場で、それまで英語はわからないと言っていたベトコンの捕虜が突然英語で突きつけた問い、「なぜあなたたちは私の国にいて、わたしたちを殺しているのですか?わたしたちは自由のために戦っています。あなたたち黒人も自分の国では自由すらないではありませんか」(『ネルソンさん、あなたは人を殺しましたか?』p111−112. 映画での台詞はちょっと違っていたように思います)。それらはネルソンさんに向けられたものですが、わたしたちも考えなくてはならないと思いました。

海兵隊員として洗脳され、ベトナム人を「グークス(gooks)」と呼び人間として扱わないことで”殺戮”を遂行するよう仕向けられ、「考えない、感じないことが、戦場で生きのびるために必要」(『ネルソンさん、あなたは人を殺しましたか?』p124)だと思っていたネルソンさんが、苦しみ抜いた果てに綴ったのがこちらです。

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 戦争を生きのびた者の一人として、ほんとうの戦争について語ることは、とりもなおさず、まずしい人、罪のない人にとって、戦争はどういう悲劇をもたらすかを語ることでもあります。

 そして、戦争から生まれ出るのは新たな戦争でしかなく、戦争から平和が生まれることなど決してありえないのだと気づいてもらうことです。(『ネルソンさん、あなたは人を殺しましたか?』p149)

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 ”戦争を知らない子どもたち”の、そのまた子どもとして戦後日本で生き、戦争は本や映画でしか知らないわたしも本当にそう思います。

 全ての戦争と、それにつながるものすべてに、強く反対します。戦争をなくすために、何をしなくてはならないのかを考え、行動していかなくてはならない、とも。 

資料室司書Cegua

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