絵本『もっと おおきな たいほうを』

今回は弊所資料室蔵書の中から、『もっと おおきな たいほうを』(二見正直作, 福音館書店)をご紹介します。

出版は2009年ですが、「月刊こどものとも」として発行されたのは2003年。もう20年以上前の絵本ですが、優れた絵本がそうであるように、全く古さを感じさせません。

絵本『もっと おおきな たいほうを』

「おうさま」は、「せんぞだいだいより つたわる りっぱな たいほう」を持っていて、それを打ちたくてたまらない。でもその機会はなく、うっとりと「たいほう」を眺める日々を過ごしています。

ある日、川で勝手に魚を取っているキツネがいるとの報告を受け、「おうさま」は怒ります。その魚は「おうさま」の大好物だったのです。

大義名分を得た「おうさま」は、「キツネのくせに なまいきだ。たいほうで おっぱらってやる」と、「たいほう」をキツネに向かって打ちます。しかし、キツネも負けてはいません。「おうさま」の「たいほう」より大きいものをキツネは持ってきたのです!

それに対抗して「おうさま」は、「たくさんの けらいと たくさんの じかんを つかって、もっと おおきな たいほうを」作らせて… お互いにどんどんエスカレートしていきますが、思いがけないラストに落ちつきます。

子どもたちと一緒に読むと、どんどん大きくなる「たいほう」に爆笑、次はどんな「たいほう」が来るのか?と待ち構え、ページをめくるたびに予想を上回る「たいほう」に笑いころげ、さらなる意外な展開(ここは伏せておきます)にも爆笑の嵐。子どもの笑いのツボを知り尽くした展開、またそこに込められたメッセージには脱帽でした。

この絵本を所長に見せたところ、「抑止力の嘘を見事に描いている」という評にびっくり。確かに「平和」を伝える=弊所資料室にあってよい絵本ではないかと思って見せたわけですが、そこまでとは。「抑止力」について、ちょっと調べてみました。防衛白書(令和4年版)によると、抑止力は「わが国を防衛するとともに、平和を創り出すために重要」なのだそうです。また、「力を背景とした現状変更を阻止するためにも、抑止力は不可欠」とのこと。

でも『もっとおおきなたいほうを』を読んだ後だと、自然と本当にそうかな、と思ってしまいます。

平和を創り出すために「抑止力」は重要でしょうか、本当に?それ以外の方法はないのでしょうか?結局際限なくエスカレートするだけなんじゃないか、そのうちに何らかの事故が発生し、あるいは「たいほう」を打ちたくてたまらなかった「おうさま」のような人間によって、威嚇のために<持っているだけ>のはずのもののスイッチが押され、意図しない、悲惨な結果になるのではないか…これは、杞憂でしょうか?

そんな不毛な<抑止力合戦>はやめたほうがいいのに。「たいほう」を作るのにも、「けらい」や「じかん」の他に、資金も技術もいるわけだし。

『もっとおおきなたいほうを』で笑った子どもたちは、そう表現はしない(できない)ものの、その不毛さに気づいていると思うのです。大きくなっても、その気づく力を持ち続けていてほしいな、と思います。

作者の二見さんは、福岡県宗像市生まれとのこと!現在は三重県にアトリエを構えていらっしゃるようです。二見正直ウェブサイト

いつか弊所にもお越しいただきたいな…と思っている司書Ceguaでした。

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